繊細な日本語から接客イメージを紐解いてみる。

「美しい人」「綺麗な人」「可愛らしい人」「笑顔が素敵な人」女性をほめたたえる言葉はいくつかありますよね。ネイリストさんであれば、日々お客様にお会いする中で、最初の印象を瞬時に頭の中で分類分けしているかもしれませんし、または「こんなイメージにしてください」とリクエストされる中でネイルデザインとその人の雰囲気をリンクさせることもあるでしょう。

実は、この「日本語独特の微妙なニュアンスの違い」に目を向けること、そして理解すること、ネイリストとしても、女性としても、接客ネタとしても少し知っておいて頂きたく、今日はこちらを掘り下げていきます。

日本語は、言葉一つ一つがとても繊細で、奥深きもの。そして漢字には、歴史があり、それぞれにきちんとした意味がある。そこで、いくつかの「〇〇な人」を例にとり、辞書を使いながら分析するところからスタートします。

「美しい人」

意味

1.容姿の美しい女性。美女。
2.容姿の美しい男子。

使用場面

・顔のパーツが整っている
・顔の黄金比率に近く、造形美である
・大人っぽい印象
・高嶺の花

解説

女性の何をもって美とするかは、究極においては主観的なものでありますが、美人とは多くの人が一致して美しいと見なす女性を指すものです。基本的には客観的な要素が多く、その人物自体の性格や内面よりは、外面のことを言うのがごく一般的ですよね。
美人はどこか冷たく見えてしまうのは内面より、先に作られたような美しさが際立ってしまうためなのでしょう。

「綺麗」

意味

1.色・形などが華やかな美しさをもっているさま。
2.姿・顔かたちが整っていて美しいさま。
3.声などが快く聞こえるさま。
4.よごれがなく清潔なさま。
5.男女間に肉体的な交渉がないさま。清純。
6.乱れたところがないさま。整然としているさま。

使用場面

・肌や髪が美しい。
・立ち居振る舞いが上品。知的。
・服にはシワもなく、清潔感がある。

解説

綺麗は美しいと似ている気もしますが、これらをみると、その人物というより、その周りを取り囲んでいるものも含まれていますね。
たとえば、顔はお世辞でも「綺麗」とは言えなくても身だしなみや知性が際立ち、自分のスタイルがきちっとしていれば「綺麗な人」に間違いありません。

「可愛い」

意味

1.小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま。
2.物が小さくできていて、愛らしく見えるさま。
3.無邪気で、憎めない。すれてなく、子供っぽい。
4.かわいそうだ。ふびんである。

使用場面

・幼い雰囲気から、守りたくなる
・雰囲気が穏やかで、おっとり、癒される
・触りたくなる

解説

元のその人の性格や顔も関係はしているとは思いますが、やはり、母性をくすぐる。男性目線だと、守ってあげたくなる。といった印象です。

それぞれの違いを分析

なんとなく同分類に思える「単語」も、こうやって見てみると明確に違いがありますね。

個人的に思うのですが、「美人」は、やはり少し特別枠。一見羨ましく感じるけれど、美人は、美人というだけでは決して幸せになれず、むしろ期待値が大きい分、人様からの目が厳しいこともあり、逆に、中身を洗練させることを疎かにしてしまうと、年を重ねるごとに苦労する、なんにしても実は苦労人でもあるのではないかとも思うのです。

一方、「綺麗」は努力の下地さえあれば、誰にでも宿ります。
すぐに身につくものではないけれど、日々、どんな心持ちで過ごすか、どんな習慣を行うか。自分をしっかり見ることができていれば大丈夫。どういう形でも努力に伴って「綺麗」を身につけられた人、一番永く愛されるのは、このタイプかもしれません。

可愛い」にもちょっとニュアンスの違いがあります。「美人」と同意語でこれが通じるのは20代まで。というのも、中身の成長が伴わないと、ちょっと痛い感じになりますよね。一方で、いくつになっても、「可愛い大人」という人は、大人のたしなみを心得ていて、そのうえでのチャーミングさを持っている人。小手先の可愛いテクニックでは、どうにもなりません。

今回選んだ3つの言葉

日本語の中で、なぜこんな言葉たちを選んだのか?
それは、私たちは「なりたい自分になることの意味」をもう一度見つめ直さなければならない時代に立たされている気がしているから。
様々な情報が飛び交い、どんな女性にもなれる方法が山のように落ちている世の中です。たとえば、ざわちんのどんな人物にも似せることのできるメイクスキルは本当に凄いと思うし、Youtube動画では、簡単にできるヘアのアレンジ方法もすぐに検索できる。ファッション界では、インフルエンサーによるプチプラコーデが人気爆発。

でも、

「こんなにも簡単にマネができる世の中になったはいいけれど、実際にやってみたら、なんだかいまいちしっくりこない。」
「流行りだからといって真似してみたものの、わたし、本当にこれやりたかったのだろうか?」

そんな気持ちになっている人も多いような気も…。

そういう人にこそ、
“美人になりたい”
“キレイになりたい“
“可愛くなりたい”
ではなくて、自分はどういう種類の美しさを確立させたいのか、そこを一歩踏み込んで考えてみてほしいと思うのです。

そしてネイリストさんたちも、どうでしょう?
さまざまなお客様のニーズが日々ある中で、お客様と、オーダーとのイメージを重ね合わせるような瞬間は多々あるかと思います。ボンヤリとしたオーダーで、ネイリストさん側の提案もぼやけてしまうと、どうしても方向の見えない、無難なデザインになったりしませんか?
今日上げた例は3つほどですが、ネイルだけではなく、そのお客様全体の雰囲気や方向性を目で捉えた瞬間、先方から発せられる「綺麗な」「かわいい」そんなオーダーに対し、なんとなくでもイメージできる提案があると、例えば「お任せで」といわれたときの提案デザインも今までとまったく違うものになるかもしれません。
「なりたい、なりたいでは決してなれない〇〇な人。」になるために、何か引き立ててあげられるような提案までしてあげられるネイリストさん、素敵じゃないでしょうか!

少し長くなりましたが、目の前の情報におどらされるべからず。自分の軸をしっかり持ちつつ、情報の取捨選択をしていく目を、お客様とともに持っておきたいですし、接客ポリシーとしてもぜひ忘れないで頂きたい、そしてやはり、日本語の持つ「ニュアンス」「行間」の奥深さは、接客の奥深さでもあるなとも思うのです。

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