異色の経歴で独立を実現し、いまや世界から注目されるフリーネイリスト「NARU」29歳。

世界から注目されるフリーネイリスト「NARU」29歳

ネイリストとして独立する人は数多くいれど、東京の一等地を拠点として、多くのファンを持つ人気ネイリストともなれば話はまた別というもの。

「今度、ネイリストさんの取材をしたいんです。できれば東京のど真ん中で、独立して成功されている新進気鋭の方をクローズアップしたいんですが、せっかくなので、とびっきりセンスがよくて実際人気の高い方、紹介して頂けませんか?」知り合いの美容業界の方に無理を言い、数名の候補を頂いた中でふと目にしたネイルチップ写真。それを見た瞬間、圧倒的なデザインセンスに一瞬にしてインスパイアされ、『この人だ!』とコンタクトを取らせていただいた方、それが今回クローズアップする米山 成美さん(※通称「NARU」)(29歳)。

独立後、すぐに恵比寿で店舗を構えた後、更なる飛躍を目指して“オシャレ最先端スポット”神宮前を拠点に、フリーネイリストとして活動している彼女は、噂通りの売れっ子。取材時間を頂くのにも苦労しつつ、予約と予約の合間、ほんの少しの時間に滑り込んみ、現在メインで活動されている明治神宮前のネイルサロン「DLAW」にて彼女が歩んできた道のりに迫ってきました。

とにかくがむしゃらに吸収しながらネイルと向き合った下積み時代。でもあるときぶち当たった壁に迷ったことも。

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NARUさんの今までの経歴、まずは大きな転機を迎える前の5年間を簡単に教えてください。

「トータルビューティの専門学校で2年間のネイル専攻コースを終了し、最初は渋谷にあるネイルサロンに就職しました。そこでの3年間はとにかく技術を学んだ時期です。ここからステップアップのために別のサロンに転職し、今度はひたすらスピードをあげる技を磨いた後、22歳で、“いよいよ自分のステージを確立するとき!”と先輩に誘われ、入ったネイルサロンで1年ほど働いたころ、5年目の壁にぶちあたりました。」

5年目の壁とは?

「人によって時期に差はあれど、少なからずネイリストであれば出会う壁だと思います。例えば私の場合、3年目くらいまでは、ネイリストとしても勉強したいことがまだまだたくさんあり、技術や接客ひとつひとつ、目標に向かって突っ走っていられたんですよね。でも、5年目くらいになると、大体のことはできるようになり、店での立ち位置もベテランになってくるんです。20歳そこそこですから、プライベートを充実させたいという気持ちもあったりして、“この先私はどうしたらいいんだろう?”“他のことにチャレンジもしてみたいな…”そんな気持ちも芽生えたり。転職したり辞めていく友人たちの話を聞いたりもする中、お店の中では重宝してもらいつつも、自分の目標が見えなくなっていた、そんな時期でした。店長を目指すべきなのか、独立も頭の片隅になくはないものの踏み切るほどの勇気はない、そんな想いを抱えて悶々としていた頃、私にとって最大の転機とも言える出来事がおきたんです。」

突然の店長指名!悩みつつ受け入れた瞬間から、ノンストップで駆け抜けた1年で運命は大きく動き出す。

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最大の転機とはいったい?

「当時勤めていたネイルサロンの社長に呼ばれ、突然“店長をやってみないか?”と声をかけられたんです。私が勤めていたアイネイルズというネイルサロンはグループとして、既に10店舗以上を経営している会社だったのですが、その中のトップブランドの中の一店舗を任せてくれるというのですから、これには本当にびっくりしました。こんなことを言われたのは初めてのことでしたし、もちろん戸惑いもありましたが、任せてもらえる喜びと、感謝や責任感が一気に芽生えたあの瞬間は、今でも忘れることができません。、“これはきっと最後の挑戦になる、引き受けよう”と、ここからは一気に意識が変わりました。」

当時、社長に条件をつけたとか?

「実は、任されたお店で、最低ミッションとして提示された売上げ目標が、かなり高い数字だったんです。引き受けたものの“まずこの数字をどうするんだ?”そこからのスタート。大変な挑戦です。誰から見ても無理だと思われてるんだろうな、とどこかで分かりつつも、やるからには徹底的に取り組みたかった。スイッチが入ると、自分の限界値を軽く超えてしまうほどに熱中してしまうタチだと分かったのはその後しばらくたってからなんですが笑、覚悟としても自分でしっかり線を引きたかったので、ひとつ賭けをしました。1年という期限を設け、『この目標をクリアし、文句のつけようのない繁盛店にすることができたらサロンを出す援助をして欲しい』という無謀なお願いをしたんです。まさか通るはずないという気持ちもありつつ、勢いで言ったこの言葉を、なんと社長は『分かった、やってみろ』と返してくださったんですよ!本当にあのときの自分の無謀さと社長の心意気には脱帽です。」

全て現場から学んだ経営。ネイリストとして積んだ経験を総動員して、まさに“いいとこ取り”でミラクル成長!

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今こうして独立されているということは、この無謀と思えた賭け、見事勝ち取ったということですよね?

「そうなりますね笑。まさに1年間、この店舗建て直しに全てをかけました。“ここでできなければ、この先私はどこに行ってもできないし、環境のせいにして終わるならそれまで”と腹をくくり、内装や家具もかえて雰囲気を替え、メニューを替え、値段も替え、最終的には店舗ブランドも替え、“ここでしかできないデザインネイル”を提供できる環境を整えていきました。もはやそうなると、『私の店』です。色々と試行錯誤しつつ、最終的にはスタッフの意識改革にまでメスを入れました。あのとき、明確に自分の中で“何となくやっていたネイリスト”から“一生かけてネイリストをやりぬく覚悟”が生まれたと思います。」

経営も数字も全く分からない中でやり切れた秘訣はあったのでしょうか?

「実は、ここで役にたったのが、今までの私のネイリスト経験でした。自分が学んできた技術、スピード、そしてこだわってきたデザインと。全てのサロンで習得した“いいところ”を総動員したんです。今までの経験で無駄だったことはひとつもない、全て糧になっているんだと実感できたことも、ここでは大きな収穫でしたね。また、会社の方針として、積極的に数字を明確に見せてくれたことは、私にとっては結果的にラッキーでした。売上げ、人件費、維持費、単価、リピート率、人材育成、マネージメント全て、現場で手探りでやっていったのですが、やればやっただけ、数字にしっかり表れていくあの喜びはまた格別ですね。」

具体的に、何をされたんでしょう?秘策を教えてもらえたら嬉しいです!

「秘策というほどじゃないんです。単純に、早く数字に反映したかったこと、そしてネイリストの体力と効率を合わせて考え、最初に取り組んだのは単価をあげることでした。最近はSNSの影響もあるので少し傾向が変わってきている部分もあるのですが、“ここのサロンでしかできないデザイン”を作ることを徹底的に意識したんです。」

これは後で深堀させていただきたいんですが、NARUさんのネイルデザインはもう芸術だと思うんです。ただ、このレベル感は誰にでも出せるものではないですよね?スタッフの方の教育はどうされたんでしょうか?

「褒めていただき、ありがとうございます(笑)。そうですね、私の方針としては“みんなが楽しいと思ってもらえるような環境つくり”と、“ネイリストとして、個性が出せる方法”を整えるために、それぞれの『ストロングポイント』を見つけてもらうような教育をしました。私でいえばアートですが、接客でもスピードでもいい、自分しかできな「これ」というものを持っているネイリストは強いです。とはいえ、当時は、比較的みんなアートへの情熱があったので、私も休みを割いて講習会を開催し、積極的に技術を学び合う場を設けることもしました。結果的に、アート技術が底上げされ、提供できるアート幅も広がったことで、以前の平均単価より3000円~5000円程度あがりましたね。同時にリピート率もあがり、結果として数字がついてきたことはとても嬉しかったです。」

感性で突き進みながらも、しっかりと最短距離をいくその勘のよさは、経験と実力に裏打ちされたもの。

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大変な中でも結果を残して、こうやって独立されたわけですが、独立するにしろ、今度は後ろ盾のない、本当の自分の店ですよね。立ち上げはスムーズでしたか?

「はい、起動に乗せたタイミングで、社長が行って来い!と送り出してくれたことには本当に感謝しています。友人と2人、まずは恵比寿で「AOEWD(エイオード)」という店をたちあげたのですが、結果的に、店長として培った経験をもとに、ネイリストとして「自分はこれで行こう」という方針をしっかり固めてから独立したので、迷いもなく、また自分のお店はやはり、またいい意味での自己責任感と、追い込まれ感を持って没頭できたので、楽しくもありました。その恵比寿で1年半を過ごし、経営も軌道にのってきたところで、今度は更なる事業拡大のため、この明治神宮前の「DLAW」というネイルサロンを拠点に、フリーネイリストとして活動するようになって半年になります。ちなみに、恵比寿のお店を立ち上げる際に社長に支援していただいた初期費用などは返し終わりました。」

ここにきて、少し突っ込んでNARUさんのデザインについて触れさせてください!最初に見たときの衝撃が忘れられないのですが、この独特のアートの世界観は虜になる方も多いと聞きます。

「そう言っていただけるのが一番嬉しいです。私が好きな世界観は天然のもの。ネイルも、例えば石などをイメージしているものが多いんです。そうこうしてるうち、“そのまま素材を入れ込みたいな”“ジェルで書くことじゃなくてアレンジできることがあるな”と思うようになりました。一方で、少しアートの方向性も折り返し地点にもきていて、“究極のシンプル”にも挑戦したくなってきています。なんにせよ、今の私が目指したいのはアートに価値をつけること。新しい価値を創造しつつ、この世界観を広めたいな、という次の目標に向かって突き進みたいですね。」

最近では、世界に配信されているネイル動画などでも講師として活躍され、海外からのお客様もいらっしゃるそうですね。

「そうなんです。自分だけで満足していた世界観を、色々な人にも伝達できたらいいなと思うようになったのも独立してからの進化です。先日もカリフォルニアのネイルサロンに勤めている方が飛び込みでいらっしゃったんですが、よくよく聞いたら私の動画を見てくださってる生徒さんで、インスタをフォローし合っていることが発覚したんです。アートで世界とつながれたことも嬉しく、そういう機会が増えてきていることもパワーになっています。まだまだ接客メインでしっかり伝えていくことを大事にしたいと思っているのですが、好きなことを突き詰めた先に、結果がついてきた経験が私の糧になっているので、夢は大きく持ちたいですね。」

最後に、今もしネイリストとして悩んでいる人に向けてアドバイスすることがあればお願いします。

「究極論、自分が“楽しい”と言う方向に行けばいいと思うんです。“意思なきところに道はなし”と言いますが、本当にそうで、迷っているにしろ自分で動かなければ何も変わらない。私は動いたことで出会うきっかけをもらい、その都度自分の目で見極め的宝今があると思っています。身近な例で言えば、求人ひとつとっても、1つのサロンに入社するのに7つのサロンに出向き、面接をうけたりもしたんです。お店やスタッフの雰囲気を自分の目で確かめることはとても大事。“思っていたのと違う”というのは、大体何かのせいにしてる場合の方が多いですから。」

終始にこやかに話してくださったNARUさん。聞けば聞くほど驚く彼女の「圧倒的な引き寄せ力」と、ターニングポイントを見逃さずに時流に乗り、切り開いていく「判断力」と「実行力」には関心させられる、そんなインタビューでした。一方で、一度見たら絶対に忘れられない、感動的なアートの世界が今後どう進化していくのかも、とても楽しみです。

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